これは以前、私が事務員として働いていた、男性が多い運送系の会社での話です。今回は、そこで強烈なキャラクターだった、D田さんをご紹介します。
Kさん(52歳・女性)の体験談
できるけど、あまりに自由なD田さん
グループそのものは1000名以上の大きな会社ですが、私がいた部署は約40名で発送業務の男性が34名、事務所は上司を含めて6名でした。男性は3名でS部長とT課長とUくん。私を含めて女性3名、2人が当時30代の私K山と20代後半のM野さん、そしてD田さんです。
D田さんはメガネをかけたすらっとした女性で、趣味はアウトドアとパチンコでした。仕事の面では数字に強く、頭の回転が早く膨大な量の仕事を1人でこなし、S部長からも頼りにされていたのです。しかし、奔放な性格で男性関係と素行面では、あまり良い話はなかったのです。
素行面では会社の駐車場の仕切りバーを安全確認せず、ぶつかって壊して逃げてそのまま知らんぷり。防犯カメラでバレたのですが、本人はひょうひょうとして反省の様子は見せず、S部長が周りに頭を下げるはめに。※後日罰金を言い渡されていました
仕事中もふらりといなくなり、歯医者に行っていたこともありました。忙しいときとヒマな時の落差がある職場ではあったのですが、ひんしゅくを買う行動が目立っていたのです。
衛生面、そこは直そうD田さん
事務所の人間関係は、特に表だった問題はありませんでした。全員がマイペースで、必要以上にお互いに干渉しあわなかったことも理由のひとつです。しかし、マイペースの度が過ぎるD田さんに関する愚痴は、みんなため込んでいたようです。M野さんと私、そしてUくんで、たまに話題になったのが、D田さんの衛生観念です。
頭が切れるD田さんには奇妙なこだわりがあり、「手を洗った後に使うタオルはキレイだから、洗う必要がない」と自信満々に語っていたのです。そんなはずはないと男性でも否定することですが、D田さんは本気。会社の彼女の椅子には、トイレから戻ったときに手をふくタオルがかけてあったのですが、3年以上かけっぱなしで黒ずんでいました。
また、彼女は4日くらいお風呂に入らないのも平気で、暑い季節だったので体から独特な香りを放っている時もありました。
出産も、やっぱり自由なD田さん
そんなD田さんですが、結婚と子どもを持つことには憧れが強い人でした。ネットゲームで知り合った男性と結婚、赤ちゃんも授かったのです。そして赤ちゃんといえば産休です。D田さんが産休に入る前には、引き継ぎで事務所のメンバーや部長と課長も大忙し。そんなみんなの苦労を全く気にする様子もなく、D田さんは産休に入ったのです。
産休に入る前にD田さんは上司と話し合い、会社で規定されている産休の3分の2を使うことになっていました。事務所の人員のやりくりが難しかったためです。しかしM野さんと私は、「計算高いD田さんのことだから、土壇場になって産休を全部使うと言い出すかも」と冗談で話していました。
そして産休から復帰する予定だった前日、D田さんから、「お父さんが大けがをしたので仕事に復帰できません」と本当に電話がかかってきました。部長の遠い目と課長のあきらめを含んだ笑顔…みんな心のどこかでこうなると思っていたのです。そして産休を全て使い切ったD田さんは笑顔で職場に復帰、復帰したあとは特に目立った問題はありませんでした。D田さんも親になって、少しは落ち着いたのかもしれません。
悪い人ではなかったのですが困った人。私はその職場はやめてしまいましたが、彼女と彼女の子どもは元気かなあと、たまに思い出すのです。