子育ても一段落し、某大手運送会社の営業所で働くことにしたのは40代半ばでした。車で10分ほどで行ける距離だったし、一日数時間の仕事で契約社員扱いにしてもらえるということだったので面接に行ったのですが、緊急で新しい営業所に人が欲しいらしくすぐに採用されました。仕事内容は、主に早朝から宅配のトラックに地域ごとに荷物を仕分けて積み込む作業です。そこの主任が50代男性、いわば古株のパワハラオヤジだったのです。
Aさん(52歳・女性)の体験談
パワハラオヤジとの向き合い方
入ったばかりの頃は、そのパワハラオヤジに仕事を教わったりして正直お世話にはなったのですが、何しろすべて自分の思うように動かないと怒る、キレる。他の皆さんは慣れたもので、怒鳴りだしてもスルーする技を持っていてうまく受け流していました。ただ、職場の雰囲気は最悪です。
特に一番の新人の私に対する風当たりは強く、面倒なことは押し付けるし、ろくに教えてもらっていないことを任されたりするのは日常茶飯事。そのたびに怒鳴られたりして、本当に辞めてしまおうと思ったことも何度もありました。でも、今やめたら負けたような気がして悔しいし、損をするのは自分だからと言い聞かせて頑張ることにしました。他の方たちがいい人ばっかりだったことも、続けられる要因だったと思います。
自分が慣れてくると、上司の行動がだんだん滑稽に思えるようになって、すぐに追い越せると確信しました。この人にうるさいことを言われないくらい仕事ができればいいんだ、と。仕事が自分に合っていたのか、悔しい思いがバネになって頑張れたのか、一年ほどして「俺が何を言っても泣かなかったのはおまえだけだ」と言われるまでになりました。
見出した活路、自分にできること
この仕事は、荷物を積み込むだけの脳筋作業だけじゃありません。荷物の管理のためのPC作業や、タブレット作業などもあります。ここがオヤジ世代のウィークポイント!今まで偉そうにしていても、こういう苦手な作業は人に任せたり分からなくなったりします。
昔はこんなことはやらなくてよかったんだ、というわけのわからない言い訳は、職場の他の人たちをドン引きさせていました。幸い私は趣味でPCは触っていましたし、スマホやタブレットにも慣れていたので、他の人も分からないことは私に聞きに来るようになりました。
そのオヤジが苦い表情で、私にタブレットがこんな画面になったけどどうすればいい?と聞きに来た時は、勝った!と心の中でガッツポーズでした。仕事は勝ち負けではないので、勝ったからどうこうというわけではありませんが、職場の雰囲気が少しづつ明るくなってきたのが嬉しかったです。
パワハラオヤジの末路
数年後、私は他の営業所の主任として移動になりました。残されたパワハラオヤジは、私という厄介者がいなくなって、今まで以上にパワハラ全開になったそうですが、それが行き過ぎて、命令を聞かなかった若い子を殴ってしまったそうです…。
その若い子は、入ったころから穏やかで仕事熱心な良い子だったのですが、私のかわりにオヤジのいじめの対象になってしまったようです。パワハラオヤジは命令(それも理不尽な)を無視したということで殴ってしまったそうで、結局他の営業所に新人として飛ばされました。
私は今でも、元の営業所の仲間とは時々会って食事や飲み会をしています。今の営業所でも、小さなトラブルかあるものの、概ね平和に楽しく仕事をさせていただいています。職場のいじめ、どこでもありがちなことですが、逃げるのではなく悔しさを自分のスキルを高めることに集中する事で、何かしら道が開けるのではないかと思います。