アウトソーシング業界最大手の会社で、ソフトウェアの技術サポートエンジニアをしているWです。会社全体の従業員数は1万人を超えます。私が勤務していたオフィスには数100名ほど在籍しており、男女比は部署により異なりますが、自身は男性が多めの部署にいました。年齢は同じですが学年が1つ上の部署リーダーAのお話です。
Wさん(34歳・男性)の体験談
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全てが正論の上司
部署リーダーのAは、2ブロックの短髪、メガネですらっとした体型、びしっとスーツを着こなす、いかにも仕事ができる男という雰囲気です。性格を端的に言うと、理屈っぽい人です。技術エンジニアという業務の性質上、トラブルの概要から詳細を聴取し対応するため仕事だけであれば適した性格のように思います。
が、とにかく正論、理詰め、相手の逃げ道を塞ぎに塞いで、もう黙るしかなくなっても自分が納得する答えを聞くまでは詰問を続けるという、理論武装の将軍の如く部下を追い詰めます。本人にはおそらく自覚は無いのでしょうが、実際のところAとそりが合わずに辞めていったスタッフが、この数年で片手の指が埋まりそうな人数いらっしゃいます。
ある理詰めの会話風景
ある日の週明け、非常に多くのお問い合わせをいただき、少し残業が多くなってしまった私は就業時刻前に大まかに2時間ほど残業したい旨をAに申請しました。そのときは特になにもなく受理され、ようやくあと1件終われば帰れるという矢先、こんなやり取りが発生しました。
A「W君、あとどれくらいで終わりそう?」
W「あ、ちょっと待ってください、だいたい・・」
A「じゃあ、あとどれくらいかかるか答えるまでにどれくらいかかりそう?」
W「そ、そうですね、10分くらいです」
A「じゃあ10分て正確にわかるまでに何分くらいかかりそう?」
W「あ、う・・ご、5分くらいですかね。」
A「何分て聞いたのに質問の回答になってないよ」
W「す、すみません」
A「すみませんじゃなくて質問の形式に合わせて」
W「う・・」
A「黙っても何も進まないんだけど」
W「5分です!」
A「なんでそんな感情的になってんの?」
W「ちょ、ちょっと・・待ってもらえますか・・」
A「なんでって聞いたんだから理由を答えて」
W「・・・」
この後はもう残業で疲れ切っていたことも有り、ひとまず回答の形式が合っていればいいやと開き直り、あたりさわりのない返事をしてその場を収めました。たった一言のやり取りでも、たとえばイエス・ノーで答える質問にそれ以外で答えてしまったが最後、正論に次ぐ正論の連鎖は勢いを増し、反発心だけがもやもやと残ったまま仕事する羽目になります。
理論武装する人はきっと不安なんだ、そうやって自分を鎧で守っていないと折れてしまうんだと自分を納得させながら、とにかく話が大きくならないようにだましだまし付き合っていきました。
身体の異常で気づく本当のストレス
数年間はその仕事を続けましたが、無意識なのか、ほかのスタッフが詰問されているのを毎日生で聞いていたからなのか、全身に湿疹が出るようになり、出勤すればするほど増えていきました。どんな組織に属しても、合わない人なんていくらでも居ると割り切っていたつもりが、どこまでいっても合わない人ってこういう事かと、身体に異常が出て初めて実感しました。
このままでは身の危険を感じ、仕事の内容は嫌いでなかったのが名残惜しいものの、退職という回避方法を選び、現在は転職しストレス少なく仕事しています。身体がいろいろと蝕まれたものの、自分にとって合わない人の限界を超えるということは、こういうことなんだと、身をもって体感できたという意味では今だから感謝できるかも知れません。
この世の中、腐るほど仕事は有る、そんな小さい世界の狭い関係の中で、一度しかない自分の人生をしんどい思いして過ごすのか、と自分に問うきっかけとなりました。
管理人と仲間達から一言
業務上それで最大効果を図れる場合もあるけど、部下がいる場合「感」も絶対必要になるんだよ。相手はロボットじゃないからね。その証拠に、人を育てられていない結果が出ているね。